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彬のおかげで、といえばいいのか。
「赤点は免れたぁ! っていうかこの点数すごくない?!」
ニコニコしながら見せる答案用紙には『84』の文字。
だから美紀が「よしよし」と詩織の頭を撫でるのに。
「この俺が懇切丁寧に教えたのにこの点数なのはどういうわけだ?」
苦々しい彬の声。
それでも詩織はニコッと笑う。
「ありがとね、先生!」
その声に彬も苦笑するだけ。
「これで冬休みは――」
心置きなく遊べる!
そう言おうとしたのに。
「課題、忘れんなよ?」
とても教員らしい声に美紀と詩織は顔を見合わせ――。
「美紀はどこ行くの?」
「あたしはスイス。スキー場とスパが併設されてる所があるの」
「いいなぁ、あたしも行っちゃおうかな」
「あ、来れば? 会員制だから来る前の日までに言ってくれたら予約取るし」
「ホント!?」
マイセン片手に弾む会話。
「……無視とはいい度胸だな、お前ら」
そんな彬の声は完全にシャットアウト。
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