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二人が酒を飲んでいる場所から少し離れた廊下の影。
息を潜め、見ているのは小十郎であった。
「何してるんだい片倉さんよ?」
「お前こそ、何やってんだ」
闇の中から現れ、小十郎に声をかけたのは宴にはいなかった佐助だ。
廊下の上にある柱の骨組みに足を引っ掛け、逆さまの状態で現れた。
「いやぁ、宴をみて若様が居なかったもんだから探しに。で、片倉さんは?」
「見張りに決まってんだろ」
「隠そうとは思わねーのか」
小十郎の即答に苦笑いをする佐助。
当の答えた本人は佐助と目を合わせようともせず、ふたりの方をずっと見ていた。
「片倉さんよ、俺の話聞いてるのか?」
「聞いている。一応・・・」
「一応って言った!?今、一応って言ったよね!ちゃんと俺の話聞いてよ!!」
(煩い忍びだな・・・)
そう小十郎は思ったが、次の佐助の一言で一気に耳をそちらに傾けることになった。
「折角、昌幸様から伝言を預かってきたのにさ!」
「昌幸殿から!?」
そう言い、反射的に佐助の方を向く小十郎。
しかし振り向いた途端、目の前に見えたのは超ドアップの佐助の顔であった。
「やっとコッチ向いてくれたな」
「テメー・・・」
「まぁまぁ!伝言のことは本当だからよ!ちょっとお耳を・・・」
佐助は小十郎の横に立ち、小さな声で話す。
話終わった後の小十郎の顔は困惑で一杯のような顔だった。
「そ、そんなこと・・・」
「どうやら会談で決まった事らしい。俺だって不満でいっぱいなんだよ」
昌幸からの伝言に混乱が収まらない小十郎。
その小十郎の姿が面白かったのか、佐助は思わず笑った。
「猿飛、テメー今笑いったな」
「へ!?なんの事かな片倉さん?」
自分でも気づかないうちに笑っていた佐助は、慌てて平常心に戻り否定した。
「チッ」
「片倉さん!?今、舌打ちしなかった!」
佐助の言葉を無視して小十郎は再び目線を二人の方へと向ける。
騒ぎすぎたのか、こちらを見ている政宗と目があった。
(騒ぎ過ぎたか)
見張りが、これでは意味をなさないと小十郎はため息をついた。
「今度はため息をついたし!?」
やはりコイツ。佐助は気に入らない。
小十郎は佐助に対し再びそう思った。
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