第1本:煌めいて 揺らめいて

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 二人が酒を飲んでいる場所から少し離れた廊下の影。  息を潜め、見ているのは小十郎であった。 「何してるんだい片倉さんよ?」 「お前こそ、何やってんだ」  闇の中から現れ、小十郎に声をかけたのは宴にはいなかった佐助だ。  廊下の上にある柱の骨組みに足を引っ掛け、逆さまの状態で現れた。 「いやぁ、宴をみて若様が居なかったもんだから探しに。で、片倉さんは?」 「見張りに決まってんだろ」 「隠そうとは思わねーのか」  小十郎の即答に苦笑いをする佐助。  当の答えた本人は佐助と目を合わせようともせず、ふたりの方をずっと見ていた。 「片倉さんよ、俺の話聞いてるのか?」 「聞いている。一応・・・」 「一応って言った!?今、一応って言ったよね!ちゃんと俺の話聞いてよ!!」 (煩い忍びだな・・・)  そう小十郎は思ったが、次の佐助の一言で一気に耳をそちらに傾けることになった。 「折角、昌幸様から伝言を預かってきたのにさ!」 「昌幸殿から!?」  そう言い、反射的に佐助の方を向く小十郎。  しかし振り向いた途端、目の前に見えたのは超ドアップの佐助の顔であった。 「やっとコッチ向いてくれたな」 「テメー・・・」 「まぁまぁ!伝言のことは本当だからよ!ちょっとお耳を・・・」  佐助は小十郎の横に立ち、小さな声で話す。  話終わった後の小十郎の顔は困惑で一杯のような顔だった。 「そ、そんなこと・・・」 「どうやら会談で決まった事らしい。俺だって不満でいっぱいなんだよ」  昌幸からの伝言に混乱が収まらない小十郎。  その小十郎の姿が面白かったのか、佐助は思わず笑った。 「猿飛、テメー今笑いったな」 「へ!?なんの事かな片倉さん?」  自分でも気づかないうちに笑っていた佐助は、慌てて平常心に戻り否定した。 「チッ」 「片倉さん!?今、舌打ちしなかった!」  佐助の言葉を無視して小十郎は再び目線を二人の方へと向ける。  騒ぎすぎたのか、こちらを見ている政宗と目があった。 (騒ぎ過ぎたか)  見張りが、これでは意味をなさないと小十郎はため息をついた。 「今度はため息をついたし!?」  やはりコイツ。佐助は気に入らない。  小十郎は佐助に対し再びそう思った。
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