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政宗が上田城に来て数時間の時が経った。
いま政宗は昌幸と同盟の打診、会談を行っている。
まだ、一人の武将でしかない幸村には、その場所にいることは許されない。
なので、幸村は政宗たちを案内し終わった後、会談が終わるまで城の中で一番大きい中庭に座っていた。
「アレは・・・」
不意にやってきたのは一人の男だ。
幸村の記憶では、その男は政宗とともに馬を降りた男であった。
名を、片倉景綱。通称小十郎。
噂では、政宗が最も信頼を置き右腕と言っていいほどの男と幸村は聞いたことがあった。
そして、鬼の様に怖いという噂も・・・
「すみません。片倉景綱殿でしょうか?」
「お前は確か、真田幸村?」
「覚えていてくれてありがとうございます」
振り向いた時の小十郎の顔は正直怖かった。
眉間にはシワがより、目も瞳孔が若干開いているような気がして怖かった。
「何か用か?」
「いえ、会談は終わったのかと思いまして」
「当主同士で話がしたいらしくてな。今は政宗様と昌幸殿の二人だけで話をしている」
幸村は当主だけの会談のことを聞いて少し驚いた。
どんなに仲がいい家でも、二人でだけで話すなど早々にない。
もし、口論にでもなって何かあったら抗争にりかねないからだ。
そのため普通なら家臣か誰かを一人は隣に置き、補助という意味で一緒にいる。
「政宗様にとっては普通のことでな。ま、それを受け入れる昌幸殿も肝が座っているが」
そう言い、穏やかそうな顔を見せる小十郎。
怖い噂しか知らない幸村は、小十郎のその顔は意外なものであった。
(笑いそうにない方だと思っていたけど、案外そうでもないんですね)
心の中でそう思った。
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