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夜、城の中で一番広い部屋はどんちゃん騒ぎの真っ最中である。
真田の家臣、部下たちも伊達の部下たちと笑顔で酒を飲んでいる。
どうやら昌幸の言ったとおり、気が合うようである。
「随分と賑やかだな」
「楽しんでますか?伊達殿」
部屋の片隅で部下たちを見ていた政宗に声をかけたのは幸村だ。
手には酒瓶が握られている。
「真田か」
「あまりお酒が進んでいないようで」
「酒には弱くてな。飲み過ぎると小十郎の奴がうるせぇんだよ」
政宗が酒に弱かったことを知らなかった幸村は持ってきた酒瓶を見て残念そうに笑った。
「そうでしたか。それではコレは必要ありませんでしたね」
「いや、折角だ。少し離れた場所で飲もうぜ」
「だ、伊達殿!?」
「行くぞ真田!盃持ってくるの忘れんなよ!」
まさか、政宗が乗ってくるとは思わなかった幸村は大声をあげる。
しかし、その声はどんちゃん騒ぎの音によってかき消された。
幸村が焦っいる内に政宗は部屋を出て行く。
急いで幸村は未使用の盃を二人分持つと政宗の後を追いかけていった。
周りの者たちは既に出来上がっているので、そんな幸村は気にも止めない。
ただ一箇所。部屋の隅にいた2人の男を除いて。
「どうじゃ?ワシの息子は」
「正直言って不安です。政宗様の気にかかることに触れなければいいのですが・・・」
「もしかしたらそうなるかもしれん。しかし、いつまでもそれに囚われていてはいかぬのではないかね?」
昌幸のその言葉に小十郎は目を細めた。
「昌幸殿。まさか知っているんですか?」
「聞いてはおった。奴が独眼竜と名乗ったことを聞いた時は驚いたよ。黽ひとつもな。ここまでひどい状態だったとは同じ“親”としては理解できんよ」
昌幸のその言葉を小十郎は何も返さなかった。
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