奏塚レン×神流川千鶴×阿散井幽魚

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「……僕が、どうかしましたか」 声が、聞こえた。 二人は驚くことなく沈黙を守り、千鶴に至ってはお握りを噛み続けている。 「……どうも、阿散井幽魚です」 「神流川千鶴だ」 名前だけの簡単な自己紹介をし、沈黙。 「……ご存知のとおり奏塚レンです」 奏塚レンはそう言って、二人と同じように黙った。 ――何故だ。 千鶴はそうおもった。 ――何故、見てくる。 ――視線が痛い。 ――奏塚レンの、視線が。 奏塚レンは黙ってはいるが、 「……」 見ているのだ。 物欲しげな顔で。 千鶴の食べているお握りを。 丁度良く千鶴が持っているお握りを。 「……あのさ」 千鶴は奏塚レンに話し掛けた。 「……はい」 奏塚レンは短くそう答え、千鶴のお握りを未だ見続ける。 ――だから。 ――それが嫌なんだって。 「欲しい?」 「え……」 千鶴が問い掛けると、奏塚レンは小さく声を漏らした。 「あげる。もう食欲なくなった」 「……ありがとう、ございます」 千鶴はラップのかかったお握りを奏塚レンに渡し、あるのか無いのかよくわからない床に胡座をかいた。 ――刹那。
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