16/28
前へ
/231ページ
次へ
「帰したく‥‥ない」 「………え………」 言いながら、気持ちがこみ上げてくる 大崎君を見ていることが出来ない 「今日はすごく楽しかったの‥嬉しかったの‥なのに‥今の大崎君、そんな顔して‥」 つかんだ服の裾を見ながら 声が震えているのを感じる 気持ちが溢れてくる 溢れた気持ちを抑えようとすると 瞼が熱くなってきて 「そんな顔したまま‥帰らないで」 涙が、こぼれた いやだ‥あたし、泣きたいんじゃないのに 「‥‥‥」 もう、お手上げ 空気を悪くしてしまったのは、あたし 悪くしてしまった空気を、どうしたらいいか 必死に考えていると 服の裾をつかんだままのあたしの手をそっとはずし あたしの方に向き直り 「‥‥‥ちょっと、だけ‥‥‥」 大崎君の腕に包まれた
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加