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すっかり食べ頃になってしまったグラタンを口に運びながら、理央は
「……もったいない…よね」
と、涙をこぼした
でも、その涙は
悲しい、とか、情けない、とかの色には見えなくて
「‥‥‥安心‥‥した？」
もともと大きな理央の目が、もっと大きくなってあたしを見る
「江川さんが…くだらない噂話を信じて…理央から去ってしまったと思っていたでしょ？……そうじゃなくて、安心した？」
理央は下を向いて、抑えていた感情を爆発させるように
声をあげて泣いた
あたしも、それを見ていると
涙が溢れそうになる
心ない噂話に傷付いて理央も、平気な訳なんてなかった
いっぱい傷付いて
いっぱい失って
でも
でも、理央は
大切なものは、何も失ってなんかいなかったんだね
ずっと理央のそばで
見守ってくれていたんだね
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