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ほんの少しかがめば、唇が触れる距離。
近い。
メガネの奥のダークチョコレート色の目が驚きに見開かれている。
微かに開いた唇。
呼んで欲しい。その唇で。
オレは震える声で懇願した。
「呼べよ。」
見つめあったままの数秒。焦げつくように欲望が高まる。神無月の唇が誘うように震える。
「は、ハル?」
柔らかい声が俺を呼んで、恥ずかしそうに目を伏せる。
ドンと心臓に何か叩きつけられたみたいに身体が震える。短い息が漏れて、くらっとめまいがした。
神無月の俺を呼ぶ声が、焼き印を押したように身体に食い込む。
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