懊悩

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「私は生粋のロマンチストなんだ。」軽々とそう言って祖父は祖母の手を取って家を捨てたらしい。その後、いろんな事があり結局は家に戻ったらしいが、唯一の条件は祖母を受け入れる事だったと聞いた。 子供の頃、今は亡き祖父に頭をなでられて、 「お前は私に似ているから、きっと大恋愛をするんだろうな。」 と微笑まれたのを覚えている。 確かに子供の頃から、好きな人には特別な名前で呼んで欲しいとか、祖父のように誰かに会うのだろうと信じていた俺は、ロマンチストなんだろう。
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