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さて、どうした物か。
ドアノブに手を掛けるが、そこから体が動かない。硬直状態になる。
さて、僕はどうするべきなのだろうか。ここに荷物を置いて帰る事も出来る。しかし、それは余りにも無責任な行為だ。
それに、中にいるかもしれない。坐遠九竜という男は。
そんな事を考えている時だった。
ガチャッ
「……!?」
「何かなぁ……?僕の事を尋ねる人間なんて全くいないからよぉ…間違いと思ってたよ…クックック…」
「あっ…。坐遠九竜さんですか?」
「いかにも。僕は坐遠九竜だ…。君は何者かな?」
「…コホ..僕は霧散直也と言います。あの…霞原竿一さんから、お届けものを預かって参りました」
そう言うと、白布に包められた例の太い木を前に差し出した。
「これは….なるほど」
一目、その中身を覗くと、坐遠九竜は着ている着物の内ポケットから、メモを取り出した
「ここまでご苦労だったね。少しゆっくりして行きなさいと言いたいところだけど、見ての通り、あいにくここは僕の仕事場だからね。君が好むようなおもてなし出来ない…すまない」
「いえいえ、霞原さんから、バイト料は貰ってますから」
「霞原さんて…。堅い堅い…。君がいつも呼んでるように呼べばいいさ。因みに、僕も、呼び方は自由で良いからね。常識の範囲内で」
「では…坐遠さん」
「坐遠って、言いにくいだろう?下の九竜から、キューちゃんでいいよ」
「なっ、呼べませんよそんな!」
「じゃあキューさん」
「何でキューが離れないんですか?」
「リューさん」
「あ、それならまだ」
「どうしてキューさんがダメでリューさんはいいのかな?」
「え、いや。
深い意味はないですけど」
「冗談だよ。君とはまた出会いそうな気がするからねぇ….今のうちに呼び名くらい決めとかないと…
後でややこしくなっても、嫌だからね」
「ややこしくってどう言う事ですか?」
「別に深い意味はないけどね
まあ、今日はありがとう。助かったよ、えっと…名前何だったっけ?」
「霧散直也です」
「よろしく霧散くん」
僕達はこうして、おじさんを通して知り合った謎の男、坐遠九竜と握手を交わし、お互いその場を離れた。
坐遠九竜 キューさんは、山へ行くと言う。
山とはどこの事だろうか。気にはなったが、今は別に、関係のない話だ。
外に出ると、雨は止んでおり、空には少し裂けた雲間から明るい陽射しが見えていた
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