第二章 感じた違和感

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江戸城 ~内庭~  江戸ではもう十日以上雨が降り続いていた。この以上とも言える長雨に違和感を覚えた吉宗は小見を呼び寄せた。 「吉宗様」 「小見、先日、この長雨で増水していた大川で鉄砲水が発生し新大橋の一部が崩落した。そのときちょうど一人の男が橋を渡っていたようで男が差していたと思われる番傘だけが新大橋の上に残されていた。町方の同心達もすぐに駆けつけ辺りを探したようだが見当たらん、男が奉公している呉服問屋の主人に聞いたところ川向こうにある田安邸に御用聞きに行く途中だったようだ」 「では今もその男は見つかっていないと・・・」 「ああ。それとこの雨、秋の長雨とは申せこの事態は明らかに異常だ」 「確かに。雨が降り始めてもう十日以上・・・」 小見は吉宗の話に言葉を返してはいたがその真意を掴み兼ねていた。 「それともう一つ気になることがある。一人の御庭番から風魔らしき人物が江戸に入ったと知らせがあった」 「風魔?」
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