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巳の刻(午前10時頃) 新大橋付近
吉宗との話を終えた小見は手掛かりを探るため新大橋の西詰にやって来た。しかし、昨日の鉄砲水騒ぎの一件で橋は役人達によって通行止めにされていた。普段から往来の多い橋でありそんな橋で人が流されたと言う噂を聞きつけ橋詰には雨が降っているにも関わらず人だかりが出来ていた。役人もなんとか人を追い払おうと雨よけ用の蓑もつけず声を上げていた。
「あーだめだだめだ。今、この橋は欄干の一部が崩落していて危険なので通行させることは出来ぬ。向こう岸へ行きたければ北側の両国橋か南側の永大橋のほうへ回れ」
「そんな、頼むから通しておくれよ。他の橋から行ってたんじゃ大変なんだからさ」
「そうだぜ。俺ら商売人はこの橋が使えないんじゃ商売上がったりだ」
「えーいうるさい、通せぬものは通せぬ。ほら、邪魔だ邪魔だ。そんなところに立ってないでさっさと向こうへ行かんか」
そのやりとりを見ていた小見は、役人が知っている顔ではないかと見たが心当たりが無く橋の状況を確認させてもらえそうにはなかった。
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