第二章 感じた違和感

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仕方なく遠目から眺めていると橋の中ほどに欄干がなくなっている箇所が目に入った。そこにも役人の姿が数人あり検分しているようだった。すると、橋詰に出来ていた人だかりから話が漏れ聞こえてきた。 「どうやら呉服問屋の奉公人が流されたらしいよ。なんでも、橋を渡ろうとしていた時に急に雨足が強まった上に濃い霧が立ち込めていたようで視界が効かず大川の様子も見えなかったようだ」 「かわいそうにね。それじゃあ鉄砲水が来たこともわからずに飲まれちまったんだろうね」 「それにしてもあの見張りのお役人さん。この雨だっていうのに蓑もつけずにお勤めとは大変だね」 欄干の様子を見ながらそんな会話を耳にした小見は何かが引っ掛かった。しかし、それが何なのかわからずにとりあえず橋の検分はあきらめその場を後にした。橋の見張り役をしていた役人は小見が立ち去る姿を目で追うと、一瞬にやりとした表情を浮かべた。さらに新大橋に出来た人だかりに身を隠しながら小見の姿に目を向ける風魔の姿があった。 「あの男・・・」 風魔はそう一言だけ呟くと消えるように姿を眩ました。
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