第二章 感じた違和感

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 未の刻(14時頃) 深川周辺  小見は新大橋からしばらく歩き永大橋を渡り深川辺りに来ていた。先ほど感じた違和感が何なのか物思いに耽りながら歩いていると飯屋の前で一人の女に声をかけられた。 「お兄さん、こんな雨の日にどうしたんだい。時間があるならちょっと寄っていってよ」 深川周辺は岡場所も多く女の客引きにもよく出くわす事があったため、小見は相手にすることなく通り過ぎようとした。しかしその時、女が言葉を続けた。 「あら、どこかで見た顔だねお兄さん・・・確か小見さんだったかね」 そう言われ小見は初めて女の顔に目をやった。小見も見覚えがあった。少し前に神隠しの一件で小見が源治と一緒にいるところに声をかけてきた飯処「駒屋」の女主人のお駒だ。 「どうしたんだい。こんな雨の中、難しそうな顔をしてさ」 小見は返事に困った。さすがに裏御庭としての素性を話すわけにもいかず何とか誤魔化そうとした。 「いや、ちょっと考え事をしていて・・・」
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