プロローグ

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 江戸城 ~城内~  寒露を迎えて朝晩の冷え込みが深まりつつある江戸、城内でも冬支度に向け仕えの者達は色々と忙しくしていた。そんな中、吉宗と爺は囲炉裏の間で会話を楽しんでいた。 「殿、季節はすっかり秋めいて来ましたなあ。この季節、一雨ごとに冷え込んで参りますし着るものを選ぶのに頭を悩ませます」 「誠にもって爺のいう通りじゃ」 「雨と言えば、ここ最近の長雨は本当によく降ります」 「そういえば、雨が降り出してからもう七日ほど経つが一向に降り止む気配がない。こんなに雨が続くのも珍しい」 「城下に広がる庭の紅葉も霧がかかってよく分かりませんな」 「爺は毎年、この時季の紅葉狩りを楽しみにしておるからなおさらじゃな」 「老い先短いこの爺にとって、春の花見と秋の紅葉狩りは何よりの楽しみです。果たして来年の花見までこの命在りますかどうか。そう思うとこの季節の紅葉狩りは今生で楽しむことができる最後かも知れませんからな」 「俺にはまだまだ旺盛に見えるが」 「気持ちでは若い者にまだ負けるわけにはと思っておりましたが、体のほうはなかなか言うことを聞いてくれなくなりました」
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