第二章 感じた違和感

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「内緒だよ。今朝源治親分から聞いた話なんだけどね。なんでもここ最近の長雨で大川が増水しててさ、そんな時に鉄砲水があの橋を直撃したらしい。その時の勢いで橋の欄干の一部が崩落して運悪くそこを通っていた一人の男が巻き込まれて流されたようなんだ。それを聞いてお役人さん達がすぐに駆けつけたんだけどこの雨と増水した大川の流れだからね。源治親分達も夜通し流された男の行方を捜してたけど手掛かりは掴めなかったそうだよ。まあ、欄干にはその男が差していたと思われる壊れた番傘が引っ掛かってたらしいけど。今朝早く来てさ。何も食べずに雨の中夜通し仕事してたから腹が減ったってね。簡単なものでいいから食べさせてくれって言って、ハチさんと一緒に粥を食べて帰ったよ」 お駒の話を聞いた小見は源治達のことを思い出しながらふと我に帰った。前に源治から聞いていたお駒の話を思い出したからだ。しかし小見の様子のことはお構いなくお駒は話を続けた。 「それにちょうどその時、雨足が強くなり濃い霧も立ち込めていたようで辺りは全く視界が効かなかったらしいじゃないか」 それは小見もさっきまでいた新大橋の橋詰で人々が話しているのを聞いていた。 「でも変だよね。鉄砲水だったかも知れないけど新大橋の欄干だけが壊れて人が流されたって・・・」 それを聞いた小見は思わず言葉が口から突いて出た。 「どういうことだ?」
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