プロローグ

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 そんな会話を楽しんでいた二人のもとへ加納久通が秋の味覚を携えてやってきた。 「殿、丹波より松茸が届きましたぞ。土瓶蒸しにしましたゆえ酒でも飲みながら、この雨で憂鬱な気分を晴らしましょうぞ」 すると爺が喜び勇んで言葉を発した。 「なに!!松茸とな。それもわしが好きな土瓶蒸しとはなかなか気が利くではないか加納よ」 加納は目を丸くしながら言葉を失っていた。それを見ていた吉宗は呆れながら思わず呟いた。 「爺にとっては花より団子のほうが英気を与えるようだな」  その後も雨は降り止まず十日が過ぎようとしていた。そんなとき、秩父にある神社で本殿の裏にあった山が崖崩れを起こし被害が出たとの知らせが入った。
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