第一章 止まない雨

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「おいおい勘弁してくれ。これじゃあ外にいるのと変わらねえぜ。ハチ、おめえちょっと屋根に上がって補修して来い」 「えっ、この雨の中ですか。親分、それは殺生ですぜ」 「うるせえ。このままだと俺の寝床が無くなっちまうだろうが!!」 「そっそんなあ。じゃあ親分が屋根に上がって修理すればいいじゃないですか」 「ハチ、おめえこの俺に口答えする気か。誰のおかげで仕事があると思ってんだ!!」 「出た出た。すぐ人の弱みに付け込むんだから」 「なんだとこら、もういっぺん言ってみろ!!」 「へいへいわかりましたよ。屋根に上って補修すりゃあいいんでしょ。補修すりゃあ」 「なんだおめえ、その嫌そうな態度は。あっ、そうかいいんだぜ。明日からおめえが宿無し文無しになったってよ。俺は一向に構わねえしよ」 そう言われると立場の弱いハチは悔しそうにしながら答えた。 「この八太、親分のために喜んで屋根の補修をさせていただきます」 「わかりゃいいんだ。わかりゃあ」 そう言うとハチは降りしきる雨の中、梯子をかけ屋根に上り補修を始めた。
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