第1話

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もともと 感情をよく表に出すタカシではないが こんなに 冷淡な表情は初めて見る 私の問いかけに タカシは答えない 「タカシく~ん!」 鼻にかかったような 甘ったるい声を出した女が 近づいてきたタクシーの後部座席から 顔を覗かせる まだ20歳くらいに見えるその女は タクシーから降りて 私たちに近づいてきた 「話は終わった? さっ 早くしないと飛行機に乗り遅れちゃう 行きましょ」 フワフワとパーマのかかった栗色の髪に フリフリのレースの洋服を着て 付けまつげをしっかりつけたバッチリメイク 甘いコロンの臭いがする 彼女は 私に 勝ち誇った顔つきをして タカシの腕を組んで促す 「ああ」 タカシはそう彼女に答えて 歩き出した
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