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病院で扱う機器や道具は、当然人命に関わってくるものだ。
安い物よりも性能の良い物を、という文句を、俺は再三口にしてみたのだが、最後に勝敗を分けたのは価格だった。やはり病院も一企業のようなものであるというところだろうか。
そう思うと、なぜだかかなりやるせなくなった。
結果は初めから決まっていたのかもしれないが、もしも違う提案ができていれば、という後悔もあった。
しかしそれを悔いている時間は俺にはなかった。何も俺が受け持つ取引先は、その病院だけではないのだ。
世間では定時といわれる午後五時頃まで、気落ちしたまま外回りをしたあと、俺は営業所に戻ってきた。
その後はデスクワークが始まる。パソコンのメールをすべて確認し、新しい見積りの作成やら書類整理やらに追われているうち、午後九時頃を迎えてしまうのはいつものことなのだ。
そんな生活が四年続いている。
もうすっかりと慣れてしまったのだが、たまにどうしようもない焦燥感に駆られるときがある。
俺は本当にこの仕事を続けていていいのだろうか――。
この仕事に意味があるのだろうか――。
しかしやがて、そんな雑念など無意味だったというように、またがむしゃらに仕事に追われることになる。
誰かがやらなければ、会社は成り立たないからだ。もちろん自身の生活を守るためという意味もある。
責任という名の、いわば麻薬のようなものなのかもしれなかった。
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