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「そう、五回。あなたは今、五回だけ人生をやり直す権利を得たのですよ」
その瞬間、俺は黙り込んでいた。そして、ドラキュラ男の言葉をいま一度反芻した。
「いや、待て。時間を戻せるだって?やっぱりおかしい。そんなのありえるわけがないだろ」
俺はじっと、男の瞳を見つめた。
そこに迷いの色は微塵も存在していなかった。この男がしゃべっている話は本当のことなのかもしれない――そう思わせる説得力のようなものが滲み出てきているようだった。
「信じるも信じないもあなた次第です。信じていないならば、おそらくこれを使う機会は訪れないことでしょう。ただそれだけのことです」
またもや彼の信念のようなものが伝わってくる。その揺るぎない自信に、俺は押し負けそうになっているのだ。
「ただ、これをお渡しするからには、あなたには少しばかりタイムリープについての知識を得てもらわなくてはなりません。そして私には、それを伝えておく義務があるのです」
「……長くなりそうだな。そんな話はいいよ」
俺は怪しい物体を、無理矢理ドラキュラ男に握らせた。
男を退けて歩き始めた。公園を出て、フェンス沿いをまっすぐに進んだ。
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