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「ここまでの話のように、このタイムリープは、あなたの精神を一日前の別の時空間へと飛ばす能力です。ゆえにタイムリープしたあなたは二度と、同じ時空間に戻ることはできなくなりますのでご注意を」
「怖いことをいってくれるぜ」
まあそれでも、たった一日だけでしかない。それくらいで歴史が大きく変わることなどないだろうと、俺は思った。
そう考えると、一日という時間設定はかなり絶妙な選択であるような気がする。
「では、それはあなたにお渡しします。あなたがそのボタンを押した場合、あなたの身体は、ちょうど二十四時間前にタイムリープをします。これまでの説明どおり、二十四時間前にあなたがいた位置まで移動する、ということになります」
「わかってるよ。時間旅行とは違うんだろ」
そうなると、仮に今ボタンを押したとしたら一瞬で自分の部屋に戻れるんだな、とふとそんなことを俺は思った。
ただし、もちろん一日前の自分の部屋に、だが。
「最後にもう一度……タイムリープは五回までなので悪しからず」
「五回……」
率直な感想をいえば、何だか少ないような気もしたが、どうだろう。
「ご健闘を祈っています」
男は軽く頭を下げ、公園の闇に吸い込まれるかのように、くるりと向きを変えようとした。
「ところで……あんたがどこの誰なのかは知らないが、なんで俺の前なんかに現れたんだ?」
彼は首だけをこちらに戻し、口の端だけで僅かな笑みを作った。
「人生をやり直したいと願っている人間のところに、私はやってくるのですよ」
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