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妙におしゃれに気をつかった千里の姿だ。そして俺は今、夢と同じように彼女の浮気を疑っている。
まさかな、と思考を遮った。
千里の裏切りに対してではなく、そんなに都合よく物事が進むはずがない、という意味で、だ。
そう都合よく――都合よく?
じゃあ俺は、やはり千里と別れたがっているということなのか?
これもまた、近頃よく頭を悩ませている事象だ。二人がすでに新鮮さをなくしてしまったいるのは、他人でもわかるくらい明白である。
たしかに、俺自身ひとりのほうが気楽だと思うことはよくある。
しかし、もしも今千里を失ってしまったとしたら、俺には仕事くらいしか残らないのだ。
それは本当につまらない、くだらない人生だと思う。人は、強がっていたとしても、誰しも心の奥底では自分の幸せを願っているのだ。
それでも今、俺は心のどこかで千里をうっとうしがっているのも事実だった。
この葛藤に結論を出すのは難しい――俺が問題の解決を先送りにしている理由だ。いや、言い訳というのが正しいか。
もしも、今の忙しさから解放される日がきたのなら、もしかすると――そんなふうに考えたまま、時間だけが過ぎているのが俺の現状だった。
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