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千里は依然として帰ってくる気配がない。
迷ったあげく、俺は気晴らしに街に出ることにした。
特に目的はない。強いていうならば、例のタイムリープを行うためのいいネタはないかを探しに行くのだ。
せっかくそんな能力が使えるのならば、試してみたい。俺の心は、七割方ドラキュラ男を信用する方向に傾いていた。
部屋を出て駅に向かった。今日は風がよく吹いている。歩くにはちょっとうっとうしいくらいだ。
途中に昨日の公園の横を通り過ぎたが、昼間の風景はいたって平凡なものだった。
もちろん、男の姿もなかった。
電車に乗り、都心の方向を目指した。ネタを探すには、やはり人が集まる場所のほうがいい。
降りたのは地元の駅から七つ進んだ先の駅だ。
比較的安価かつ短時間で都心に出られるというのは、都会に住むメリットではある。
いまだに迷子になってしまうほどの、巨大な駅の地下通路を抜けて、俺は地上に出た。
強風は相変わらずで、この辺りでも同様に吹き荒れていた。
周りは雑居ビル郡だ。大小さまざまであり、店舗もいろいろだ。
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