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しかし近頃、俺は真剣に人生をやり直したいと願ったりしている。 大学を卒業し、大した取り柄もない中小企業に就職をしてから、早四年が経過していた。 歳はすでに二十六歳。そろそろ落ち着かなければならない歳でもある。 社会人になることが、これほどまでに人生を生きにくくするとは、入社当初はまったく考えてもいなかった。 仕事に追われ、自らの時間を削る生活。親しかった友人とは物理的に離れてしまい、そのせいで互いに疎遠になった。 そして現在、この街で唯一つながりのある恋人とは、日々言い争いばかりしている。 いや、言い争いといえるほどのバイタリティーすら、すでに残っていないというのが最新の現状だった。 それでも、そんな俺を助けてくれる人間はいない。 当たり前だ。社会に出れば、それが当たり前なのだ。 ひとりで責任を抱え、ひとりで生きていく力が時には必要になる。 早い話、俺は疲れていた。疲れて、目の前の現実を逃避したかったのだ。 だから、時間を戻したいなどという妄想に駆られた。 逃避したその先に、明るい未来などないことがわかっていながらも。 ただ――。 ただ、もしも本当に、過ぎ去ってしまった時間を取り戻せたとしたら――。 はたして人々は、今度こそは本当に、自分の思い描いた道を選ぶことができるのだろうか。
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