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俺は当てもなく歩き始めた。歩道には、溢れかえらんばかりの人間が歩いていて、そのせいで車道に出る者もいる。
しかも夜になれば路駐のタクシーが多いため、都会の道路状況はお世辞にも良いとはいえない。
ただ、都会の夜はやはり華やかだ。
アーティストの楽曲を流すだけの宣伝トラックがあるということを、俺は都会に出てきてから初めて知った。
そんなふうに、たくさんの街頭と喧噪と人混みに紛れているだけで、不思議と孤独を忘れられたりする。
そういう街を、今俺は歩いている。
目的は特になかったため、まずは最寄りの書店に入った。
マンガ本は封がされていて読めないため、向かったのは雑誌コーナーだ。
近頃はすっかりインドアになってしまったから、不必要な雑誌を買ってしまうことが多くなった。
活字を読むのことは、暇な時間を潰すには最適なのだ。
ただ今日だけは買うのをやめておいた。それより、タイムリープのネタを探すほうが先だ。
書店を出て、信号待ちをしていると、道路の反対側の先頭に一際目立つ美人が立っていた。
細身で色白で背が高め、丸顔の頭はほどよく小さい。丸顔は俺の好みなのだ。
そんなモデル体型の彼女だから、人込みの中でも際立っているのだった。
本来田舎者の俺には、都会は美人が多そうだという勝手な思い込みがあったが、これが案外そうでもない。
これもこの街に出てきて気づいたことだ。
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