21人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっそう」
諦めの色を含んだ声で千里は呟いた。
「あたしは気の利かないひとですね。すいませんでした」
乱暴に扉を閉めて、千里は自室に帰った。
彼女の部屋の扉が閉まるとすぐに、何やら激しい物音が聞こえてきた。
少し面食らったが、気にしていては身がもたない。
それにしても――と俺は考えた。
千里はどうしたというのだろう。
関係が冷めきって以来、千里がさっきのように怒りをあらわにしたことはなかった。お互い意地を張って、無関心を貫いていたはずなのに。
まあ、いいか。仕切り直しだ。
俺は今一度、例のブツを手にした。白いボタンが、俺を手招きしているかのようだ。
意を決して、俺はボタンを押した。
次の瞬間、気を失っていたわけでもないのに、ふっと意識を取り戻したような感覚に陥った。
最初のコメントを投稿しよう!