14/21
前へ
/85ページ
次へ
「あっそう」 諦めの色を含んだ声で千里は呟いた。 「あたしは気の利かないひとですね。すいませんでした」 乱暴に扉を閉めて、千里は自室に帰った。 彼女の部屋の扉が閉まるとすぐに、何やら激しい物音が聞こえてきた。 少し面食らったが、気にしていては身がもたない。 それにしても――と俺は考えた。 千里はどうしたというのだろう。 関係が冷めきって以来、千里がさっきのように怒りをあらわにしたことはなかった。お互い意地を張って、無関心を貫いていたはずなのに。 まあ、いいか。仕切り直しだ。 俺は今一度、例のブツを手にした。白いボタンが、俺を手招きしているかのようだ。 意を決して、俺はボタンを押した。 次の瞬間、気を失っていたわけでもないのに、ふっと意識を取り戻したような感覚に陥った。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加