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――― 青い塗装の剥がれかけたオンボロの扉を、俺はゆっくりと開いた。 途端に、少し甘い香りが漂ってきた。同時に煙草の臭いもした。 それらが混じり合って嫌な臭いを生み出したため、俺は思わず顔をしかめた。 乱雑に靴を脱ぎ捨て、まっすぐ先にある部屋を目指した。俺の住家である四畳間だ。 その途中には廊下を兼用した台所がある。流しを見ると、そこには一人分の食器が置かれていた。 まさか俺の分の夕食があるはずないよな、と当然のことを自身に呟きながら部屋に入った。 やはり、良い意味で予想を裏切られることはなかった。 黒い机の上はいつものように、カップ麺の空容器と、食べ終えた菓子袋で埋め尽くされている。 さらにいうと、床にも脱ぎっぱなしの衣類や雑誌、漫画類が散らばっているのだった。 掃除と片付けは、俺のもっとも苦手な行為だ。 それらの障害物をかき分けて、俺はどっかりと腰を下ろした。
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