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『終点~青森~』
車内アナウンスが耳に入り、はっと我にかえる。
ぼんやりと眺めていた車窓は、気付けば東京のけしきとはまるで変わっていた。
(何年振りだっけか……)
高二の夏。
期間限定の格安チケットで、初めてのひとり旅を決行した先が青森だった。
縄文の歴史を見に行くと豪語した俺をからかい笑う仲間達の中で、矢嶋だけが目を見開いて俺を見上げていた。
結果、ひとり旅ではなくなったけれども。
矢嶋が、くっついてきたから。
矢嶋と過ごした初めての夏は、ガキんちょ二人の気ままなブラリ旅。
車窓の外は見事な快晴。
東京よりもずっと広い空を見上げ、高鳴る胸の音を感じた。
あの日も暑い、夏の日だった。
矢嶋も同じように、思い出したんだろうか。
あの頃は悩むよりも、楽しむ事に夢中だった。
趣味も性格も全く違う俺達が、同じ場所を目指して歩いた。
同じものを見て、同じように感動して、それが矢嶋で、俺は妙に嬉しくて、それから俺達は誰よりも仲良くなっていった。
嬉しかった。
それは多分、あいつも、きっと。
あの時と同じ道を、お前は今、歩いているんだろうか。
なあ。
何を思って、過去を思う。
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