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体育館倉庫で悪戯に襲われている矢嶋の姿をたまたま目撃してしまった俺は、制服を剥がされかけてもされるがままの矢嶋にあんまりにも腹が立ち、足を止めた。
ふざけている連中を蹴散らした後、うずくまって動かない矢嶋を見下ろして、お前はアホかと怒鳴りつけた。
思い返せばそれが矢嶋と俺の始まりだったなと、笑いが漏れる。
水城は強いからわからないんだと返され、ボロボロ泣かれてまたムカついた。
自己主張しなきゃそこで負けなんだよと怒鳴り返せばさらに号泣され、泣くんじゃねぇと更に怒鳴りつけてしまった自分を思い出し、まあ青かったなと反省する。
その後何故か矢嶋は俺の後を付いて歩くようになり、俺もそんな矢嶋を構うようになって、気付けばいつも、隣には矢嶋がいた。
それが俺は、嫌じゃなかった。
お互い都内エリアの大学に進学が決まり、家を出てシェア生活を始めようと提案したのはどちらからだったか、正直思い出せない。
不思議なくらいに違和感のないまま共同生活が始まり、それぞれの生活には必要以上に干渉しないという暗黙のルールも守られ、ストレスなく日々を過ごしていた。
でもそう思っていたのは、俺だけだったんだろうか。
矢嶋は無理をしていたんだろうか。
でも、そうだ。
確実にわかること。
俺は矢嶋を、傷つけた。
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