第30話

3/14

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「信介さん。私、秋雄さんの無事を祈っていたいの……ご両親たちへの報告をお願いしてもいいかな……?」 「……」 「ねぇ! 信介さん聞いてるの!!!! ねぇ……お願いだから貴方ぐらい返事をしてよ……お願いよ――」 膝の上で、ぎゅっと握り締める両手。汗ばむ感触。熱くなる瞳。 ――また洗いっこしようぜ、ほら早く行くぞ! ――頭もついでに洗ってやるよ、嬉しいだろう? こう見えて、お前に感謝してるところもあるんだよ。 ――俺はいつも帰りが遅いし、お前が両親の面倒を見てくれる。本当に助かっている。ありがとう。 秋雄の幻聴、笑みが見えた。 俺もきっと、あっちへ逝かなくてはいけない人間なんだ――。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加