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今日は12月25日。ここはとある広場。
若いカップル達や子連れの家族で賑わっている。その中を俺は一人で歩いていた。
今日はたまたま外に出た日だったのだ。
いつもは自室でヒキニート宜しくやっているのだが、何故だろうか。不意に外を歩いてみようと思ったのだ。
普段は外に出ることすら拒む俺が歩きたいと思うなんて何かがあるに違いない、そう思いぶらぶらしていた。
その何か、が自分の人生を壊すものとは知らずに。
突然、周囲から悲鳴があがった。甲高い女の子の悲鳴だ。それに伴い男、老人、子供、ここにいるあらゆる人がパニックを起こしている。
そして、その人々の目線の先には刃物を女に突き刺してる黒尽くめの男。
俺はとっさに逃げようとした。家に戻ろうとした。走ろうとした。
だが長年のヒキニート生活で足の筋肉は衰え、終いには度胸さえなくなっていたようですっかり脚が竦んでしまい動けないでいた。
(あ、やばい…)
本能的に感じた。あれはきっと無差別殺人だろう。そして、他の人々が逃げ惑ってる中一人だけ突っ立っているのだ。どうなるかは明白である。
黒尽くめの男は俺の方を向くと、ゆっくり歩き出し近づいて来て、刃物を腹部に突き刺した。
熱い、痛い、痛い、痛い、痛い。
ただ只管にそれだけが頭の中をぐるぐるしている。
(あぁ、俺は死ぬんだな。)
流石にこの状態では生きていられるとは思えない。だんだんと自分の身体が動かなくなるのを感じた。
薄れゆく意識の中、最後に思ったこと。
(まともな人生を送りたかったな…。)
こうして、水無月海斗の地球での人生は幕を閉じた。
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