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_とあるマンションの一室。
風呂上がりの俺は玄関で目の前の光景にイラついていた。
香坂「お前、何度も言ってんだろ。今すぐ元の場所に返して来い。」
一ノ瀬「なんでだよ~。可哀想だろ。」
香坂「だったら自分の家に持って帰れ。」
一ノ瀬「仕方ないだろ。お前んちのマンションの前だったんだから。とりあえず、ここで言い合いしてても仕方ないからあがるよ~。」
そう言いながら一ノ瀬はまるで自分の家と言わんばかりに俺の部屋へとあがりこんだ。
知らない女を背負ったまま…。
目の前の同僚、一ノ瀬湊はやたらと生き物を拾ってくる。
しかもなぜか俺の家に…。
たしか以前は仔犬にはじまり、タヌキ、ネコ、ついには赤ん坊まで拾ってきやがった。
そして今日もまた…。
リビングに辿り着くと一ノ瀬は普段俺の特等席でもあるソファーに拾ってきた女を寝かせていた。
俺は興味が沸かずリビングを素通りし、キッチンに水を飲みに行った。
キッチンから一ノ瀬のほうには視線も向けずに聞いてみる。
香坂「で、どこの誰?」
一ノ瀬「…さぁ(笑)?」
香坂「お前、ホントに何にも考えずに拾ってきたんだな…。」
一ノ瀬「お前、失礼なこと言うねぇ~。俺だっていろいろ考えたんだから。俺の予想だと多分23か24ぐらいだと思うんだよ。やっぱりこういうところから出会いを大切にしていかないと。」
キッチンで水を飲む俺からでも分かるほどに一ノ瀬の金髪の奥の瞳は子供のように輝いていた。
俺としたことが…一ノ瀬の女に対する変な純粋さを忘れていた。
香坂「…そういう問題じゃねぇし。つうかお前に聞いたのが間違いだった。」
一ノ瀬「酷いなぁ(笑)でも可愛いよ。この子。」
香坂「言ってろ。」
俺らの話し声からか急にソファに寝かされていた女が目を覚ました。
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