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表情を変える事無くただ真っ直ぐに俺を見ている。
「無理矢理ではありません。これが私の役目だと思っておりますので」
「役目…ですか」
自分のこれからを左右する事だと云うのに、役目と紫は言う。
淡々と告げるのは興味が無いのではなく、感情が冷めているだけの様だった。
「良い返事は頂けますでしょうか」
「…すみませんが、紫さんとどうこうなる気は有りません。俺には既に決めた人が居るので」
まるでロボットを相手にしてる気分だった。
「そうですか。ではその方にお会い出来ますでしょうか?」
「会うんですか?」
「はい。それで私とその方のどちらが良いか秤に掛けて下さい」
どうこうなるつもりも無いと言った筈なのに。真っ直ぐに俺を見る目が、揺るがない強い意思の現れの様に思えた。
「…分かりました。それでは後日連絡しますのでそれまでお待ち下さい」
簡単だと高を括っていたのが仇となった。
これはこれで厄介だ。
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