はじまり

8/12

1534人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
表情を変える事無くただ真っ直ぐに俺を見ている。 「無理矢理ではありません。これが私の役目だと思っておりますので」 「役目…ですか」 自分のこれからを左右する事だと云うのに、役目と紫は言う。 淡々と告げるのは興味が無いのではなく、感情が冷めているだけの様だった。 「良い返事は頂けますでしょうか」 「…すみませんが、紫さんとどうこうなる気は有りません。俺には既に決めた人が居るので」 まるでロボットを相手にしてる気分だった。 「そうですか。ではその方にお会い出来ますでしょうか?」 「会うんですか?」 「はい。それで私とその方のどちらが良いか秤に掛けて下さい」 どうこうなるつもりも無いと言った筈なのに。真っ直ぐに俺を見る目が、揺るがない強い意思の現れの様に思えた。 「…分かりました。それでは後日連絡しますのでそれまでお待ち下さい」 簡単だと高を括っていたのが仇となった。 これはこれで厄介だ。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1534人が本棚に入れています
本棚に追加