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約束の時間よりも早く着き、シートに凭れて里沙を待つ。
するとマンションのエントランスから小走りに出てくるのが見えた。
ハーフアップに纏めた髪や、ミディアムコートから覗く膝丈のスカートが揺れる。
デート服。
そんな言葉がぴったりの服装に…何故だか笑みが溢れた。
それを悟られない様にと車から降り、助手席のドアを開けてエスコートする。
「聖さんごめんなさい、待ちました?」
近くまで来ると、申し訳なさそうに微笑む里沙。
「待ってないよ。俺が早く来ただけだからね」
「良かった」
車に乗り込みシートベルトを締め、エンジンをつける。
「里沙、今は敬語はナシね」
「はい…あ、分かった」
ニコッと悪戯に微笑むその顔。
これから人を欺くのだから、余所余所しいのでは通用しない。
なるべく親密にしていなければならないのだ。
多少はいちゃつく程度の事も。
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