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ホテルのロビーへ入る前、どちらともなく目を合わせた。
お互いに頷き微笑む。
作戦開始。
里沙の手をそっと俺の腕に添えてエスコートする。
ロビーへ入ると、紫が既に窓際の席で待っていた。
その姿は凛としていて。他を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。
「紫さん、お待たせしてしまって申し訳ありません」
横から近付くと、顔だけを此方に向けてきた。
「いえ、約束された時間までまだありますから」
無表情に答えるその顔は俺の隣の存在に気付くと、里沙へと向けられた。
「初めまして。聖さんとお付き合いさせて頂いてる鈴川と申します」
ニッコリと、余裕のある顔で里沙が挨拶をした。
「そう…あなたなのですね」
ゆっくりと、上から下へと視線を下ろして値踏みするかの様に観察している。
「紫さん、いきなりですが…今日はもう1人お呼びしているんですよ」
「そうですか」
あまり興味が無かったのか、表情は変わらなかった。
いや、殆ど変わる事の無いだろう表情なのだけれど。
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