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「申し訳ありません、遅くなりました」
俺たちの立っている直ぐ横から、淡々とした声をかけられた。
すると里沙が一歩前へ出た。
「いえ、私達も今来た所ですから」
「そうですか」
表情を変える事も無く、答える男。
「川岸さん、此方が私とお付き合いしている…」
「山中 聖です。初めまして」
名刺を取り出し、川岸に差し出した。すると、川岸も名刺を出してくる。
お互いに受け取ると、川岸は名刺を凝視している。
「N社の…山中…まさか…」
「えぇ、父の会社です」
「そうでしたか」
そう言いながら俺を上から下まで見回して。何かを納得したのか無表情で名刺を仕舞った。
大方、川岸が思ったであろう事は想像がつく。
きっと、能無しのボンボンとでも思ったのだろう。
まぁ、舐められてた方がやりやすいんだけどもね。
油断してるから。
それよりも、この川岸がなぜ里沙に拘るのかがわからなかった。
確かに里沙は社長令嬢だけれども、次女だ。
里沙の姉の旦那が跡継ぎに決まっている筈なのに…
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