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「へへ。夜に食べよっと」
車の助手席に座り、自分用に買ったシフォンケーキを見ながら頬を緩ませている里沙。
それを横目に車を走らせる。
里沙って見てて飽きない。
食べ物を与えれば直ぐに懐きそうな気もするのに、そう簡単にはいかない女。
運転しながら口の端が僅かに持ち上がる。
「あ、聖さんうちの父親、少し変だけど気にしないでね?」
隣で苦笑しながら言ってくる。
「変って…何が?」
「…会えば分かると思う。疲れるかもしれないけど」
「ご忠告ありがとう。心してかかるよ」
「あはは。そうしてもらった方がまだマシかな」
そして車は里沙の実家へと到着する。レンガ造りの家。
「聖さんの実家みたいに大きくないけど、私の実家です」
「実家は実家でしょ。俺の家じゃないしね。後々兄貴が継ぐだろうし」
「あはは、確かに実家は実家よね。てか、聖さんが次男で本当に良かったわ。じゃなきゃ責任重大だったからねー」
里沙が戯ける。
思った事をズバズバ言うのもまた里沙らしい。
「確かに。俺、長男じゃなくて助かってるしね」
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