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「里沙は私の娘だ」
立ち上がり、眼鏡を直しながら俺を見てくる。
「三姉妹だが、皆私の娘だ」
「ちょっと、お父さん何言ってるの?」
里沙が顔を顰めている。
「皆私の大切な娘たちだ」
「お父さん、ちょっと…どうしちゃったの?」
里沙が慌てて止めようとする。
その様を見て、いつもの父親では無いのだろうと思った。
「皆大切に…床の間に飾って置きたい位なんだ」
俺はただ、父親の目を見つめていた。
「そんな里沙に良縁をやろうと思ってたんだ。なのに自分で見付けた相手が居るからと断られた。幸い、向こうから断ってくれたから良かったものの…」
そこまで言うと少し俯いた父親。
「余計な世話だとは分かっていても、心配なんだ。里沙には…娘たちには幸せになってもらいたいからな。辛い思いはさせたくないというのが親心ってもんだ。だから…何処の馬の骨だか分からん奴には任せられないと思ってる」
「…お父さん…」
「たった一度挨拶に来た位で許してやるつもりもない。例えそれが山中の人間でもだ。
気心が知れん内は認めんからな」
そう言うとリビングから出て行こうとする。
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