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「簡単な気持ちでは来ておりませんが、認めて頂けるまで粘ります」
「口では何とでも言える」
引き止めようとする俺に、睨む様に一瞥してくる。
「ちょっとお父さん、今日は挨拶だけって言ってたでしょ?何でそうなるの?」
里沙が出て行こうとする父親を止めた。
「ふふ、娘を取られるのが寂しいのは分かりますが、お話位良いじゃありませんか」
母親は和かに声をかけ、テーブルに紅茶の入ったカップを並べている。
「そうだよ、お父さん。どんな人だか話してみないと分からないでしょ?」
里沙の懇願する様な顔に父親は表情を少し緩めた。
「お前がそこまで言うなら話くらい聞いてやる」
フンと鼻を鳴らし、渋々席へと着く。
「お時間を取らせてしまって申し訳ありません、ありがとうございます」
頭を下げると、母親が笑う。
「誠実な方じゃないですか。何がそんなに気に食わないのかしらね。ふふ」
ニコニコと穏やかな母親とは違い、父親は感情の起伏が激しい様に思えた。
「山中さんもどうぞお座りになって下さいね」
「ありがとうございます」
これは…中々大変かもしれない。
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