進行

11/22
前へ
/123ページ
次へ
「簡単な気持ちでは来ておりませんが、認めて頂けるまで粘ります」 「口では何とでも言える」 引き止めようとする俺に、睨む様に一瞥してくる。 「ちょっとお父さん、今日は挨拶だけって言ってたでしょ?何でそうなるの?」 里沙が出て行こうとする父親を止めた。 「ふふ、娘を取られるのが寂しいのは分かりますが、お話位良いじゃありませんか」 母親は和かに声をかけ、テーブルに紅茶の入ったカップを並べている。 「そうだよ、お父さん。どんな人だか話してみないと分からないでしょ?」 里沙の懇願する様な顔に父親は表情を少し緩めた。 「お前がそこまで言うなら話くらい聞いてやる」 フンと鼻を鳴らし、渋々席へと着く。 「お時間を取らせてしまって申し訳ありません、ありがとうございます」 頭を下げると、母親が笑う。 「誠実な方じゃないですか。何がそんなに気に食わないのかしらね。ふふ」 ニコニコと穏やかな母親とは違い、父親は感情の起伏が激しい様に思えた。 「山中さんもどうぞお座りになって下さいね」 「ありがとうございます」 これは…中々大変かもしれない。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1534人が本棚に入れています
本棚に追加