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ただ、テーブル向かいの親子に愛想笑いを貼り付けるしかなかった。
「娘も聖さんと是非にと言っておりまして」
「まだ19ですが気立て良く育てたつもりでございます」
良く喋る大人の間につまらなさそうに座るまだあどけない少女。
「素敵なお嬢さんだろう。そろそろお前もどうかと思ってな」
「そうですよ聖。貴方にもそろそろ身を固めて貰いたいもの」
俺の心情など気にする事なく都合の良い様に事を進めようとする両親。
「すみませんが少し失礼します」
堪らず席を外した。
「ははは。どうやら緊張してるみたいでして…すみませんな」
個室の扉を閉め、僅かに聞こえてきた親父の声に辟易する。
曽祖父の代で築き上げた会社を引き継いだ親父は今より社を大きくする事に躍起になっている。
先日神戸支社長の婚約が決まってからと云うもの、見合いの話をやたらと持ち寄られていて。
その気など全く無く無下にしていた。
そんな中、仕事だと呼び出され接待だった筈が…
まんまと嵌められた。
重い足取りでロビーを歩き、外の空気でも吸おうと…
どうにか断る口実を思案していた。
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