1534人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前…分かってるな」
嬉しそうに頬を緩めた父親。
その言葉に…苦しくなる。
「やっとマトモなの、来たな」
ニヤリと笑うと徐に立ち上がり、母親の持って来たお絞りを受け取る。
「おい、山中。泣かすなよ」
それだけ言うと、身を翻し扉へと向かう。
「はい。ありがとうございます」
ふん、好きにしろ。と、ボソリと呟くとお絞りを持ったままリビングを出て行った。
名前で呼んでくれたって事は…
少しは気に入られた…かな?
「聖さん、大丈夫?」
里沙が冷たいお絞りを渡してくれた。
「ごめんなさいね山中さん、お父さんに付き合って貰っちゃって」
「いえ…大丈夫です。楽しかったですから」
冷たいお絞りを頬に当てた。
火照る顔にちょうど心地良くて。
これ、何で帰ればいいんだろ。
だなんて冷静に思ったり。
「里沙、お部屋で少し休んでもらいなさい」
「あ、うん。そうだね」
「すみません、気を遣わせてしまって」
「良いのよ。お父さんが呑ませたんだから仕方ないもの」
ニコっと微笑む母親。
「聖さん、こっち」
「悪いね」
里沙に連れられて部屋へ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!