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ヒヤリとしたモノが頬に触れ、驚きで瞼を上げた。
「あ、大丈夫?」
里沙が心配そうに顔を覗いていた。
「あぁ、うん。大丈夫」
どうやら物思いに耽っている間に寝てたらしい。
頬に触れた冷たいモノは里沙の手たった。
…何故頬に手が?
思わず視線を里沙の手へと向ければ、それに気付いた里沙が微笑む。
「少し赤くなってるから熱いのかと思ったの」
「…あぁ、成る程」
背凭れから体を離し、持って来てくれた水をゴクリと飲む。
程良く冷えた水は喉に心地良かった。
「聖さん、もう少し休んだら私が送ってくね」
「…運転出来るの?」
素朴な疑問は口から溢れ出た。
「聖さん、それ失礼。ちゃんと運転出来るから。たまにドライブにも行くんだからね」
「そーなんだ?」
それは意外で。ペーパーだと思っていたのに…
「じゃ、頼むね」
「任せて!」
ニコリと得意気に微笑んだ里沙。
ふ。と、笑みが溢れる。
「でも、里沙は帰りはどうするつもり?」
「あ、忘れてた。バスで帰るから良いよ」
「悪いよ。俺がタクシーで帰るから」
自分の事よりも先に俺を気遣う里沙。
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