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幸いな事に相手にもその気が無さそうなのがせめてもの救いだった。
その気になっていたとしたら相当面倒だった。気のある相手を諦めさせるのは骨が折れるから。
俺の事など見向きもしなかったあの子も、大方嵌められた口なのだろう。
しかし、何か良い打開策はないものか。
こめかみに手を当て鬱な気分を振り切ろうとした瞬間、体にドンと衝撃を受けた。
「…失礼」
「ご、ごめんなさいっ」
ぶつかってフラついた相手を支え、顔が見えた瞬間…
「「…あ」」
お互いに発した間抜けな声が被る。
「鈴川、何で此処に…」
「課長、何で居るの?」
同じ疑問の台詞がまたしても被った。
そして、お互いに顔を顰めると溜息を零した。
「嵌められたんだよ」
「嵌められたんです」
……一瞬だけ間が空く。
「「は?」」
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