はじまり

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「それじゃ、後でまた」 「分かりました。課長、これからお願いしますね」 嫌味なく他意の無い笑みを向けてくる鈴川。 俺に興味が無いからこそのその顔に、この関係の安全性を再確認して。 「鈴川、その課長ってやめない?」 「あ…それもそうですね。では、聖さんで」 「ん、それが良い」 お互いに微笑み、納得する。 連絡先を交換した俺達は、それぞれ先程の場所へと戻る事にした。 嵌められたとは言え相手側の顔もある訳だから、今日は取り敢えず我慢して。 後日、親に挨拶に伺うという段取りにしたのだ。 なので、今日を乗り切れば良いだけの話になる。 それだけで今後こう言った嵌められ方をしなくて済むと思うと、自然と笑えてくる。 今日は最悪な日だと思っていたのだが、そうでもなくなったのだから。 幾分軽くなった気持ちと足取りで、先程の部屋へと入る。
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