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「ニナ、落ち着こうよ」
落ち着けるわけないよ。
ニナの前ではいつもタケルくんは嘘ばっかりなんだもん。
「……っ」
悲しくなって涙が出てきた。
タケルくんが困ってるみたいで表情を歪める。
「ばか、バカっ。タケルくんの嘘つき。ニナはタケルくんなんか大キライっ。こんなに好きなのにっ、鈍感」
「なにそれ?ニナは、俺に“お兄ちゃん”を求めていたんじゃないの?」
「違うよ、ニナは初めて出会ったときのタケルくんが好きなの。お兄ちゃんを演じてるタケルくんなんてイヤっ」
タケルくんから顎を掴まれて、顔を上に上げさせられる。
唇に触れてきたそれが嬉しかった。
ニナを喰らい尽くすような唇が愛しかった。
「好きだよ、ずっと好きだった。でも告白したら、好きな人がいるって」
離れた唇に寂しさを覚えた。
タケルくんが困ったように笑うから、ニナはホッペにキスした。
「言ったよ、でもニナは好きじゃない人にワガママは言わない」
たしかに言った。
価値観の違い。
身長の差。
歳が離れてること。
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