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キスに応えるように、抱きしめる腕が強さを増す。
酸素を求めて離れようとすると、
さらに深く口付けられて――
溺れそう……。
何度も交わすキスに、
意識は遠くなっていく。
「……きょ、う……、んっ」
何とか名前を呼ぶのに、今度は舌を絡め取られて言葉すら奪われる。
ふわふわとした感覚。
薄く開けた視界に見えるのは、揺れるオレンジの髪。
それが眩しくて……、
詩織は瞳を閉じた。
感じるのは聴覚と肌の感覚。
少し荒い息と、触れ合う肌の温もり――。
唇を開放され、大きく息を吸い込む。
瞳を開ければ、飛び込んでくるのは
切なそうに歪んだ恭の顔。
だから、震える手を伸ばして両頬に添えて――
「恭、大好き」
今出来る最高の笑顔を。
「シオ――」
抱き寄せられて、耳元で呼ばれる。
この声が好き。
抱きしめてくれるこの腕が好き。
優しく触れる、
この唇が、好き――。
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