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「こんなこと、誰も喜ばないよ」
寧ろ、悩みの種。
このことが父親にバレたら、恭は――。
「だから、忘れて」
きっと、あの家を出なくてはいけなくなるから。
「シオ」
優しいのにどこまでも残酷な声。
「……恭、教えて」
だけど、ひとつだけ、
ひとつだけ聞きたい。
詩織は泣きそうなりながら顔を上げた。
「あれは、嘘じゃないよね?」
あの夜、
『好きだよ、シオ』
そう言ってくれた、あの言葉だけは――。
真っ直ぐに向けられる詩織の視線に、恭は瞳を細め詩織からの視線から逃れるように顔を背けた。
そして、
「嘘、じゃないよ」
ゆっくりとまた恭の視線が詩織に向けられる。
「シオは俺の妹だからね」
これが、恭の答え。
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