夢と現実

2/39
315人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「……オ、起きて」 いつもと変わらない優しい声。 「シオ、朝だよ」 「……んっ」 違うのは瞼の上からでも感じる太陽の光の強さ。 そして、 「……あれ?」 シーツの肌触り。 「起きた? シャワーを浴びてこれに着替えて」 差し出されたのは綺麗な薔薇の絵が描かれた紙袋。 「さっき、下で買ってきたから」 いまいち理解できない頭で、「うん」と頷いて身体を起こそうとして―― 「きゃっ!」 また身体を毛布の中に。 その身体は一糸纏わぬ姿だったりするから……。 「あっ、えと、そのっ」 顔を赤くして顔まで毛布で隠して、慌てる姿に恭はクスリと笑う。 「これ、バスローブ。風邪引かないでね」 そう言って、詩織の頭をクシャリと撫でて寝室の外にでていった。 パタンと閉まるドアの音を合図に詩織は身体を起こす。 空気に触れる肌を隠すように急いでバスローブを纏って、小さく息を。 「夢、じゃないよね」 そう呟きたくなるくらい、恭は変わらない。 だけど、身体の中に残るにぶい痛み。 だから―― 「……夢、じゃない」 そう口にすれば火照る身体、 思い出すのは昨日の夜。 熱くなっていく頬。 「シャワー……」 浴びよ。 そう呟いてベッドから降りた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!