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「……オ、起きて」
いつもと変わらない優しい声。
「シオ、朝だよ」
「……んっ」
違うのは瞼の上からでも感じる太陽の光の強さ。
そして、
「……あれ?」
シーツの肌触り。
「起きた? シャワーを浴びてこれに着替えて」
差し出されたのは綺麗な薔薇の絵が描かれた紙袋。
「さっき、下で買ってきたから」
いまいち理解できない頭で、「うん」と頷いて身体を起こそうとして――
「きゃっ!」
また身体を毛布の中に。
その身体は一糸纏わぬ姿だったりするから……。
「あっ、えと、そのっ」
顔を赤くして顔まで毛布で隠して、慌てる姿に恭はクスリと笑う。
「これ、バスローブ。風邪引かないでね」
そう言って、詩織の頭をクシャリと撫でて寝室の外にでていった。
パタンと閉まるドアの音を合図に詩織は身体を起こす。
空気に触れる肌を隠すように急いでバスローブを纏って、小さく息を。
「夢、じゃないよね」
そう呟きたくなるくらい、恭は変わらない。
だけど、身体の中に残るにぶい痛み。
だから――
「……夢、じゃない」
そう口にすれば火照る身体、
思い出すのは昨日の夜。
熱くなっていく頬。
「シャワー……」
浴びよ。
そう呟いてベッドから降りた。
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