夢と現実

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「シオ?」 「はいっ!!」 ドア一枚向こうから聞こえる恭の声に飛び跳ねる。 「どうかした?」 「な、なんでも!!」 そう叫んでドアを開ければ、 「――わぁっぷ!」 思った以上に近い位置に立っていた恭の胸にぶつかって。 「……シオ、大丈夫?」 少し残念そうな恭の声に「ふぁい」と答えた。 見れば、恭も昨日とは違う服。 黒の細身のパンツに白いシャツにはストールを巻いて。 「よかった」 「えっ?」 そんな恭の声に見とれていたことに気付いく。 「服、似合ってる」 たったそれだけの言葉で火照っていく頬。 それを誤魔化したくて、 「――えと、ありがとうね? あたしも気に入っちゃった! でも、よくサイズ分かったね? あっ」 思わず口を付いて出た言葉に右手で押さえて、 ゆっくりと顔を上げる。 すると恭はクスリと笑って、 「買いに行く前、鈴花さんに聞いた。女の子のサイズなんて分からないよ」 なんてタネあかしに「そっ、か」と安心するように息を吐いた。 「それじゃ、モーニングでも食べに行こうか?」 「えっ?」 てっきり、朝もルームサービスだと思っていたのに。 ドアノブに手をかけたまま、振り返って恭が笑う。 「ここのラウンジ、好きなんでしょ?」 そんな恭の声に詩織は「うんっ!」と答えて、 恭の開けたドアから部屋を飛び出した。
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